終活で何を残すか|エンディングノートだけでいい?

終活を考えたとき、まず思い浮かぶのは何でしょうか。

断捨離、エンディングノート、遺言書の作成……?
動画や映像で想いを残すという選択肢を思い浮かべる人はまだ少ないのではないでしょうか。実際、2024年に楽天インサイトが発表した調査でも、終活でしたいことは「家の中の荷物整理」(46.8%)、「財産整理」(32.2%)、「パソコンやスマートフォンなどのデータ整理」(27.5%)が上位を占め、動画や映像を挙げる人はわずかでした。

万が一の時のために備えることは、間違いなく大切です。ただ、一つ聞かせてください。残された家族が本当に求めるものは「迷惑をかけられなかった」という安堵だけでしょうか。僕は2018年に妻をがんで亡くして、痛感したことがあります。

声が聞きたい。動いている姿が見たい。

欲しかったのは、妻の声であり、表情であり、妻がそこにいる感覚でした。

終活の目的を、大きく2つに整理してみます。

一つは残された家族への手続き的な配慮。財産や重要書類の所在を伝えておく、不要なものを処分しておく、葬儀の希望を書き残しておく。「迷惑をかけない」ための準備です。

もう一つは残された家族の心への配慮。あなたがいなくなった後、家族が悲しいとき、寂しいとき、何かをよりどころにしたいとき、あなたの何かが手元にあるか。

多くの人が前者を「終活」と理解している。でも後者も、同じくらい大切なはずです。そしてこの後者において、エンディングノートや手紙だけでは届かない領域があります。

エンディングノートは優れたツールです。

医療のこと、介護のこと、葬儀のこと、供養のこと、財産のことなど、自分の意思や希望を書き留めることができるからです。実際に、それが遺族の支えになることは間違いありません。

僕自身、妻が遺したノートに救われた経験があります。1冊は「家の事情」と書かれたもので、銀行口座、加入している保険などについて書かれたもの。もう1冊は一言だけ、僕へのメッセージが書かれたもの。そこには、ページを埋め尽くすほど大きな字で「愛してくれて、ありがとう」と書かれていました。

妻は手続き的な配慮も、心への配慮もしてくれていました。

しかし、文字では補えないものは確かにあるのです。

エンディングノートや手紙が機能しない場面があります。内容の問題ではなく、形式の限界です。

温度が伝わらない。
文字は意味を伝えます。でも声のトーン、笑い方、間の取り方は伝えられません。「大丈夫」という一言でも、文字と声では届き方がまったく違います。

記憶は少しずつ薄れる。
人間の記憶は儚く、大切な人との日常の断片は気づかないうちに失われていきます。映像はその劣化を止めてくれます。後から見返したときに、発見ももたらしてくれます。

僕はかつて、棚の隅で眠っていた古いビデオテープを発見しました。21年前、妻と職場で入籍・妊娠を報告した日の映像でした。そこには妻の声があり、笑顔があり、文字や写真では絶対に残せなかった妻そのものがありました。

その映像の一部をまとめた動画がこちらです。

一般社団法人 終活協議会が2025年に実施した調査(771名対象)では、お別れビデオに「興味がある」と答えた人は4割以上。一方で「実際に見たことがない」という人は8割以上にのぼりました。

関心はある。でも、まだ選択肢として認識されていない。

この数字が示しているのは、映像を終活に取り入れたいと感じている人が確実に増えている一方で、「どうすればいいかわからない」「ハードルが高い」という状態で止まっている人も多いということです。

終活ムービーが全員に必要なわけではありません。正直に書きます。

こんな方には特に響くと思います。

  • 言葉にするのが苦手だけど、伝えたいことがある
  • エンディングノートを書いたが「これだけでいいのか」と感じている
  • 親に何かを残してほしいが、どう頼めばいいかわからない
  • 自分が元気なうちに「生きた証」を形にしておきたい

逆に、手続きの整理や財産管理が主な目的であれば、ノートや遺言書の方が適しています。どちらが正解ということはありません。目的によって、最適な手段は変わります。

終活の本質は、整理することではなく、残すものを選ぶことだと思っています。

何を残すか。誰に向けて残すか。どんな形で残すか。エンディングノートで十分なのか、映像も必要なのか。その問いに向き合うことが、後悔しない終活の出発点です。

僕は放送作家として、長らく「ひと」を描いてきました。言葉にならない想いを「伝わる形」に整えること、ただの出来事に意味を与えて物語にする仕事です。終活の資格も持ち、相談役としても活動しています。その経験を、あなたの「残したいもの」に使わせてください。

「映像を残すなんてハードルが高い」と感じている段階から、一緒に考えます。何を残したいか、まだ言葉になっていなくてもかまいません。それを引き出すところから始めるのが、僕の仕事です。


出典:
楽天インサイト「終活に関する調査」(2024年1月)
https://insight.rakuten.co.jp/report/20240304/
一般社団法人終活協議会/想いコーポレーショングループ「お別れビデオに関する意識調査」(2025年4月)
https://shukatsu-kyougikai.com/news/3647/